
竹垣があるので、人間どもは近づけない。苔むした土の上。木漏れ日が落ちてきて風も通る。この上なく満足そうな顔。
鼻のあたりにこのような模様があると、「あっ、ちょび髭」と思ってしまう。ちゃんと立派な髭があるのにねえ。
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6月、水無月。蝉羽月とも言うのですが、これは蝉の羽のような薄い衣を着る季節ということ。清少納言もシースルーの着物で公達を悩殺していたに違いない。
さて、私と見つめ合いながら子猫を産んだ『みい』。彼女は私に「アナタの子供よ」と言ったけれども、もちろん本当の父親がいた。とても大きな茶トラ。彼は生粋のノラで普段は呼んでもちらりと振り返って睨むだけ。強いオスであることを示す大きな顔と太い鼻筋でボスの貫禄を漂わせていた。
『みい』に子供を産ませた父親であるので、勝手に『とうさん』と呼んでいた。全くなついてくれなかったのだけれど、一度だけこんなことがあった。正月のこと。
我が家の入り口の近くでじっとこちらを見ている。少し近づいてもいつものように離れていくこともなく、じっと見ている。
正月なので食い物に困っているのだなと思い、お正月用にとってあった上等のロースハムをごちそうした。なんと、手から食べて、壁に顔を擦りつけて喜んでくれた。
その後は、会っても一瞥をくれるだけのいつもの『とうさん』に戻ったけれど。
そんなある日、歩いていたら『とうさん』がいたので、
「あっ、とうさんだ」と話しかけたら、ちょうど歩いてきた見知らぬおじさんが、
「あぁ、どうも」と会釈して通り過ぎていった。
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